若者向けの保険を分かりやすく解説します
「どのような保険に入ればいいか」は、ほとんどの人に共通する課題です。しかも、当人がまだ若い場合は、周りに相談できる相手がいなくて、保険会社の外交員がすすめるままに保険に加入してしまったというケースが少なくありません。
保険はこれからの人生で長い付き合いになる大切なパートナーで、マイホームの次に高い買い物と言われています。
ここでは、公的年金や健康保険といった社会保険制度でカバーされる保障について説明するとともに、どういう観点で保険を選べば良いかについて解説していきましょう。今回は、若者=4年制大学を卒業して2~3年経った20代半ばと仮定して話を進めていきます。
▼ 目次
どのような種類の保険商品があるのか
まず保険にはどういう種類のものがあるのかを見ておきましょう。民間の保険会社が取り扱っている保険は大きく次の3つの分野に分類されます。
(1)生命保険(第一分野)
- 死亡保険
- 死亡した場合に保険金が支払われる一般的な生命保険。
- <商品例>生命保険(定期・終身)
- 生存保険
- 満期まで生きていた場合に保険金が支払われる、貯蓄性が高い保険。
- <商品例>年金保険(終身・確定・有期)
- 生死混合保険
- 死亡した場合は死亡保険金が、満期まで生きていた場合は生存保険金が支払われる、貯蓄性が高い保険。
- <商品例>養老保険、学資保険
(2)損害保険(第二分野)
対象となる財産が損害を受けた場合に保険金が支払われます。
<商品例>火災保険、地震保険、自動車保険、ペット保険
(3)医療保険(第三分野)
第一分野と第二分野の中間的な保険。そのため、生命保険会社も損害保険会社も参入し、様々な商品が登場しています。
<商品例>医療保険(定期・終身)、介護保険、傷害保険
特定の物にかける(2)の損害保険を除くと、若者が加入を検討する保険としては、(1)の生命保険と(3)の医療保険が一般的です。
生命保険を決める上で考慮するところ
加入する保険を検討する際には、まず家族構成(扶養家族の人数や年齢)に基づいて、必要な保障額を計算することが、最初のステップです。
そして、公的年金や健康保険などの社会保険による給付金等を差し引いて、必要な保障額が確保できるように保険を決めていくことになります。
一般的に、生命保険への加入を考える際に、最も注意すべきところは子供の人数と年齢です。子供が乳幼児なら高校や大学を卒業し、社会人となって自立できるまでに20年近くかかることになります。その間の生活費や教育費が必要です。
また、残された配偶者は子供がある程度大きくなるまでは手がかかるため、専業主婦(主夫)なら再就職が難しく、共働きなら仕事を辞めざるを得なくなるかもしれません。そうなると、当面は配偶者の生活費も必要となります。
しかし、子供が社会人となるまでの生活費・教育費すべてを生命保険でまかなう必要はありません。なぜなら、遺族年金という公的な社会保険制度があるからです。
「子」や「子がある配偶者」は、子供が18歳になる年度末まで、遺族基礎年金や遺族厚生年金を受け取ることができます。つまり、高校3年生の3月まで遺族年金が支給されるということです。
したがって、子供が社会人になるまでの子供(や配偶者)の生活費・教育費から、遺族年金やその他の収入を差し引いた金額が、生命保険などの手段で用意すべき必要な保障額となります。
なお、一家の稼ぎ手が元気で働いていれば、子供が成長するにつれて遺族が必要とする保障額は徐々に減っていきます。
子供の成長とともに、社会人になるまでの年数が短くなるからです。そのため、定期的な保険の見直しをすることが望ましいと言えるでしょう。
医療保険を決める上で考慮するところ
医療保険への加入を考える際に、重要なところは「医療費の自己負担が公的医療制度である健康保険でどこまでカバーされるか」です。
会社員の場合、会社の健康保険(社保)で、以下の3つの保障が得られるケースが多いと言えます。
(1)高額医療費制度
この制度は社保だけでなく、国保(国民健康保険)にもあります。医療費が高額になった場合、一定の自己負担限度額を超える部分は健康保険が負担してくれる制度です。
例えば、年収が約370~770万円の会社員の場合、「80,100円+(医療費-267,000円)×1%」(入院時の食費・居住費・差額ベッド代は対象外)が自己負担限度額となります。
(2)傷病手当金
「傷病手当金」は病気やケガで仕事ができずに会社を休み、給料をもらえなくなった場合に、健康保険から支給される生活保障。これは国保にはない社保の大きなメリットです。
この金額は1日につき「直近12ヵ月間の標準報酬月額平均値÷30×3分の2」となっています。
なお、この傷病手当金は仕事を休み、自宅療養をしている場合でも支給対象となるのが特徴です。
(3)健康保険組合独自の付加給付
(1)の高額医療費制度に加えて、多くの健康保険組合では、医療費が高額になった場合、従業員(=社保の被保険者)の経済的負担を減らすために、独自の給付金を出しています。
この追加の給付金は「付加給付」と呼ばれ、企業や健康保険組合により、支給額に差があるのが注意点です。
医療保険の場合も、生命保険と同様に、医療費の自己負担額から、(1)~(3)の給付金等を差し引いても残る自己負担を、どう医療保険でカバーするかという考え方が重要です。
ただし、生命保険の場合は、遺族がこれから先に必要となる生活の保障という長期的なものですが、医療保険の場合は短期間で済む場合がほとんど。
「一時的な出費なら貯蓄で十分まかなえる」という人なら、医療保険に加入する必要はないと言えるでしょう。
しかし、万が一、長期で入院が必要となった場合は「差額ベッド代」の問題が出てきます。差額ベッド代は高額医療費制度の対象外となるため、差額ベッド代を払うか払わないかによって、医療費の自己負担額が大きく変わってくるので注意が必要です。
さて、ここで入院時の差額ベッド代について少し説明しましょう。差額ベッド代を払うと個室に入れるイメージがありますが、実は個室から4人部屋までが差額ベッド代の対象となります。
差額ベッド代は各病院が料金を設定できるため、病院により料金は様々。なお、病院が差額ベッド代を患者に請求するためには、病院側は「患者が差額ベッド室の利用に同意した」という同意書にサインをもらう必要があります。
- <1日当たりの差額ベッド代平均額(推計)>
- 1人部屋:7,797円
- 2人部屋:3,087円
- 3人部屋:2,800円
- 4人部屋:2,407円
- 全平均:6,144円
- 最低額50円、最高額378,000円
※ 厚生労働省「主な選定療養に係る報告状況」(2016年(平成28年)7月1日現在)
なお、ベッド数が5床以上の病室(いわゆる大部屋)は、差額ベッド室の要件を満たさないため、差額ベッド代はかかりません。
したがって、差額ベッド代を払いたくない場合は、同意書へのサインを拒否し、大部屋を希望すればいいのです。
万が一、大部屋に空きがない場合は、大部屋に空きが出てから入院する、大部屋が空いている他の病院を紹介してもらうなどの方法があります。
一方、「差額ベッド代を払っても個室に入りたい」という場合は、丸々自己負担になることを十分認識しましょう。実際に、多くの保険会社がこの差額ベッド代を入院給付金でカバーする医療保険を売り出しています。
ケーススタディ1:25歳女性・会社員・独身(扶養家族なし)の場合
それでは、実際に保険の選び方について見ていきましょう。ケース1の独身で扶養家族がいないという場合は、性別にかかわらず、最も遺族に対する責任が軽いケースになります。
生命保険に関しては、自分が死亡しても経済的に困る遺族がいないため、生命保険に加入していなくても特に問題はありません。
自分の死亡による経済的な負担は、自分の葬式代(家族葬で数十万円程度)と身辺整理費用くらい。100万円程度の貯蓄があれば十分まかなえると言えます。
「葬式代を出せるくらいの貯蓄がない」という場合は、ネット保険会社の定期生命保険(保険期間10年)なら、月々数百円程度の保険料で、500万円クラスの死亡保険に加入可能です。
次に、医療保険について考えてみましょう。
会社員(=社保の被保険者)の場合は、健康保険の(1)高額医療費制度、(2)傷病手当金、(3)健康保険組合独自の付加給付が充実しているために、医療保険に加入していなくてもそれほど困らないと言えます。
ただし、万が一、入院が必要となり、「差額ベッド代を払っても個室に入りたい」場合は、前章で説明した通り1日当たりの平均7,797円程度の差額ベッド代が必要です。
しかし、これはあくまでも平均値であり、この金額よりも高い差額ベッド代を請求する病院はたくさんあると言えるでしょう。
とりあえず、1日の入院給付金1万円の定期医療保険(保険期間10年)に加入する場合、保険料が安いネット保険を利用すれば、保険料は月々千数百円くらいで加入可能です。
若いうちは傷病にかかるリスクが低く、医療保険の必要を感じる人は少ないと言えるでしょう。
しかし、年を取るにしたがって傷病リスクが高まり、万が一、慢性的な持病を抱えることになった場合は、医療保険に加入すること自体が難しくなるのです。
今は医療保険への加入を見送ったとしても、30歳前後の若くて健康なうちに、最低限の保障が付いた終身医療保険に加入することをおすすめします。
ケーススタディ2:25歳男性・会社員・既婚(扶養家族:妻(専業主婦)25歳・子(女子)0歳)の場合
ケース2は20代半ばとしては、家族に対する責任がかなり重いケースになります。
それでは、この会社員が死亡した場合、子供が大学を卒業するまでの22年間、遺族にとって必要な保障額を、以下の前提条件をもとに大まかに試算してみましょう。
- <前提条件>
-
- 妻、子供の生活費:月30万円(家賃10万円+生活費20万円)
- 子供の教育費:大学卒業まで1,000万円
- 遺族年金の受給額:子供が18歳になる年度末までは月10万円、以降は中高齢寡婦加算が月5万円
- 妻は子供が中学校入学以降、月10万円のパート収入を得ます
支出(30万円×12ヵ月×22年+1,000万円)-収入(10万円×12ヵ月×18年+5万円×12ヵ月×4年+10万円×12ヵ月×10年)=5,320万円が不足する保障額です。
したがって、夫が死亡した場合は5,320万円を生命保険などの手段で補う必要があります。しかし、子供が成長するとともに必要な保障額は減っていくため、年々保険金が減っていく代わりに保険料が割安になる「逓減(ていげん)定期保険」がおすすめの生命保険です。
なお、この試算は子供が大学を卒業するまでの22年間しか考慮していません。妻の老後の生活を考えると「終身生命保険」などと組み合わせて、保障額を増額した方がより安心です。
次に、医療保険について見ていきましょう。このケースの場合、「差額ベッド代を払ってでも個室に入りたい」と考えるよりは、大部屋で我慢してその分貯蓄に励んだ方がいいと言えます。
なぜなら、健康保険で手厚くカバーされている夫よりも、0歳児の育児をしている妻の方がネックになるからです。
妻が倒れた場合、入院とまではいかなくても、ベビーシッターやヘルパーを雇うための費用が必要になる可能性が高いでしょう。
突然のケガの場合には「傷害保険」が有効ですが、病気の場合は保障されません。また、一般の医療保険でも入退院後の通院は保障されても、単なる通院は保障の対象外となります。
それならば、貯蓄に励む方がおすすめです。妻の病気やケガが長引くようなら、介護休業を取得する選択肢も考えましょう。
なお、独身者のケースと同様に、傷病リスクが増す30代になったら、夫婦共に最低限の保障が付いた終身医療保険に加入しておいたほうが安心と言えます。
※この記事は、2018年3月時点の情報に基づいて作成されています。
※当サイトは原則「リンクフリー」といたしております。











